古文書ファイル(Archives)

ー以下は過去の情報に関するファイルですー

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ワシントン政治の視点


【2007年5月】

2008年大統領選大統領候補の品定め
 

(1)共和党候補

 大統領という国のチーフ・エギュゼキュテイブになる人物の前職として、連邦の上院議員などよりは州のチーフ・エギュゼキキュテイブである州知事であった人の方が適格だとの一般的コンセンサスは今回の選挙でも通用する。

 先日15日の共和党大統領候補10人の公開討論会に出席した候補者の前職・現職の内訳は前州知事が4人、前市長が1人、現上院議員が2人、現下院議員が3人という顔ぶれであったが、大統領としての潜在的適格性という点では、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事、マイク・ハカビー前アーカンソー州知事、ジェイムス・ギルモア元バージニア州知事などの州知事組に一日の長があった。ただ4人目のトミー・トンプソン前ウィスコンシン州知事は一見して人に与える印象が悪く、指名争いに生き残れる可能性は少ない。

 彼らと比べて上院議員や下院議員は日常的に議論と妥協を仕事としているため、議論そのものは上手であるが、決断力と指導力を要求されるチーフ・エギュゼキュテイブには向いておらず、大統領候補として弱い印象を与える。下院議員はこれまでの選挙基盤が小さ過ぎるため、全米を相手にした選挙をいきなりおこなうだけの力がなく大統領になれる可能性は最初からほとんどない。マッケイン上院議員は明らかにワシントンの政治にどっぷりつかり過ぎて最早そこから逃れ出ることはできないということがますますはっきりしてきた。議員出身のなかではサム・ブラウンバック上院議員が判り易い好感の持てる議論を展開してよい印象を残したが、演説になると全く下手で、これは大統領候補としての大きな欠陥である。

 ジュリアニは前ニューヨーク市長という変り種で、大都市のチーフ・エギュゼキュテブとして連邦議員よりは州知事に近い職歴ではある。討論会でも決断力があることの片鱗を見せた。しかし、幾ら人口が多いといってもニューヨーク市長しか経験のない人物がいきなり米国の大統領になるということには納得しがたいところがある。元々は大統領になれる器の政治家であるかどうかに疑問のあった人物で、今後選挙戦が進んだある段階で、何らかの理由でトップの地位からずれ落ちると、そのままずるずると後退してしまうのでないかという感じもある。9/11テロ後の「英雄」であり、ヒラリー・クリントンを破れそうだとの世論調査結果があり、これまでのところ世論調査の支持率でトップにあるためにジュリアニへの注目が続いているが、他の候補に一旦追い抜かれると後は続かないのではないか。

 かくしてやはり、ロムニー、ハカビーなどの前州知事組に大統領候補の適格性では一日の長があるということになる。しかしロムニーは第1四半期にせっかく2100万ドルの巨額の資金を集めたにもかかわらず各種世論調査では未だ支持率が10%に達していない。他方、ハカビーは彼と実際に会ったり彼の討論や演説を視聴した人の間では一様に高い評価を得、潜在性をほめられるが、第1四半期にはわずか50万ドルの選挙資金しか集めらなかったという厳しい現実がある。いまのところいずれも”electable”ではないということである。ギルモアはトンプソンと同様人に与える印象がよくないという欠陥がある。

 共和党にとっての理想は、今後ロムニーなどの州知事経験組が伸びてゆき有力候補にのし上がることであるが、今のところその期待通りにことが運ぶかどうかは判然としない。

 未だ立候補の名乗りを上げていないフレッド・トンプソンも、上院議員や俳優という前職を考えると大統領候補の適格性は劣る。ニュート・ギングリッチ元下院議長は10月まで待って結局出馬しない可能性の方が強いが、大統領候補の適格性としても下院議員、下院議長の前職はそのまま大統領職に置き換えられる種類のものではない。 

(2) 民主党候補

 民主党大統領候補の前・現職の内訳は現上院議員4人、前上院議員1人、現州知事1人、現下院議員1人と、上院議員経験者が圧倒的に多い。しかもヒラリ・クリントン、バラク・オバマの2人の現職上院議員とジョン・エドワーズ前上院議員が先頭を争う位置にある。

 しかし大統領適格性ということを考えた場合、唯一の州知事経験者であるビル・リチャードソンの存在がクローズアップされなければならない。彼は元下院議員で、クリントン政権時代に駐国連大使、エネルギー長官などを経験した後、ニューメキシコ州知事となったヒスパニック系政治家で、州知事であるばかりでなく連邦政府の多様な仕事を経験したユニークな候補である。資金集めの能力も相当にある。大統領候補にはなれなくても副大統領候補に請われる可能性が高い政治家である。

 先頭を走る3人の候補とリチャードソンに次ぐクリストファー・ドッドとジョゼフ・バイデンの2人も上院議員で、民主党候補はほとんど上院議員によって占められている。適格性を考えた場合大統領の前職として理想的とは言えない上院議員が民主党候補の中で独占的地位を占めているということは、民主党候補の潜在的な弱さを示していると考えることもできる。例えばロムニーが共和党大統領候補に指名された場合、ロムニーはこうした民主党の上院議員の大統領候補としての適格性の欠陥をつき、自分の州知事としての2期の仕事が大統領の仕事の準備になったことを誇示することができる。歴史の風向きが民主党候補を絶対に優位にしていることは間違いないが、大統領の適格性という点では民主党候補が優位であるとは決して言えないということである。

 ヒラリー・クリントンが女性であり、バラク・オバマが半黒人であるということは、得票に大きなインパクトを与える。特に有権者の半分以上を占める女性有権者がヒラリー・クリントンにどういう投票をするかが、予備選でも本選でも決定的に重要なファクターとなろう。この点ではヒラリー・クリントンは有利であると考えてよい。しかし大統領候補の資格としてはクリントンの経歴は強いとは言えないのである。彼の夫のビル・クリントンがアーカンソー州知事を4期も務め大統領候補としての申し分ない適格性をもっていたのとこの点で大きく異なる。

 オバマもクリントンと似たり寄ったりの大統領候補としての適格性しか持たない。新鮮でスター性があるため多くの得票をできる可能性を秘めてはいるが、大統領になってからの仕事は全く未知数である。大統領候補の適格性としては決して強い候補とは言えない。エドワーズも似た状況にある。上院議員を1期務めただけのエドワーズが大統領職の準備を充分にしたとはお世辞にも言えない。

(3) 無所属の第3候補としてのブルームバーグ

 マイクル・ブルームバーグ現ニューヨーク市長が自分の資産の5分の1の10億ドルをはたいて無所属の大統領候補として立候補するという噂が本当になった場合には、大統領選に地殻変動が起きる。民主党、共和党の最有力候補でも、集められる資金はせいぜい2億ドルから3億ドル程度と考えられているのに、10億ドルというのは桁が違う巨額の政治資金であり、ブルームバーグは無所属の多くのハンデイキャップを克服できる可能性がある。

 ニューヨーク市長でジュリアニ候補と同じ政治家暦であるが、市長になる前はブルームバーグのチーフ・エギュゼキュテイブとして組織を率いてきた実績があるビジネス的な指導力を持つ人物である。これは大統領候補の資格としてマイナスにはならず、むしろプラスになる可能性がある。副大統領候補として共和党のチャック・ヘイゲル上院議員を指名するという噂もあり、それで自分の連邦政府の経験不足を補うことを目指すということらしい。

 いずれにしても、ブルームバーグは来年の大統領選の潜在的な台風の目である。(2007年5月25日)
 
 

【2007年3月】

慰安婦問題に対する日本の反論の問題点

  日本陸軍が韓国や中国の少女や若い女性に直接を手をかけて売春を強要したのか、それとも中国や韓国の売春宿経営者が日本陸軍におもねってそういうことを代行したのか、あるいは、少女や若い女性が誘拐同然に連行されたのか、それとも貧困にあえぐ彼らの親たちがが金欲しさに少女や若い女性を売り飛ばしたのかが問題なのではない。現実に多数の少女や若い女性が日本陸軍兵士の性欲のはけ口に使われたという歴史上の事実が重要なのである。日本はそれを直視しなければならない。

  「史実を世界に発信する会(Society for the Dissemination of Historical Fact)」(代表 加瀬英明氏)などが米国下院のマイク・ホンダ議員などに宛てて、対日批判決議案(H.Res.121)の撤回を求めて相当に強力なロビイングを展開しているが、その反論の中で、売春婦は日本兵士の何十倍、何百倍もの金をかせいでいたとか、売春婦は町にショッピングにゆく自由があったとか、日本だけが非難されるがアメリカも含めて何処の国も似たり寄ったりのことをやっていたという主張をしている。しかし強姦や女性に対する非人道的な虐待は1949年のジュネーブ戦犯条約の中ではっきり禁じられた国際犯罪である。ジュネーブ条約を批准した日本が「強制売春はどの国もやっていたことだ」とか「売春婦が日本の兵士の何十倍、何百倍もの金を稼いでいた」などと言ってこれを正当化しようとするのは、日本人の人権に対する意識の低さを曝け出すような恥ずべきことと言わねばならない。日本が反論する権利を持っているのは勿論であるが、強制売春の犯罪性に対する意識の低さを曝け出すような議論はやめてもらいたい。

  また、全く当てにならない戦中のビルマでの韓国慰安婦3人のインタビューに基づいて、「従軍慰安婦は単なる売春婦であった」と結論した米軍の古い報告書を引き合いにだして反論を展開しているのも感心しない。このインタビューの証言がどれだけ信憑性のあるものか、証言がすべての従軍慰安婦の考えを代表するものであったかどうかなど、このリポートには問題点が多い。他方において強制売春に服した生き残りの女性の何人もが強制売春の経験を公に証言していることをどのように説明しようとするのか。戦後のGHQは日本の戦中の幾多の悪虐を冷戦下という戦略的理由によってカバーアップした。慰安婦問題もそういうカバーアップされた日本の悪行のひとつと考えられるのである。

  安部首相は右翼の支持を回復するために蒸し返す必要のないものを蒸し返した。蒸し返した以上は歴史の事実を直視してこれを機会に日本の戦中の恥を糾弾すべきところである。ところが反対に、日本陸軍が韓国人女性を誘拐して強制売春させたことを記した記録は存在しないなどと焦点の外れたことを言っている。彼の頭はどこかでずれているのではないかと考えざるを得ない。(2007年3月27日)
 
 

来年の大統領選予備選の日程

  来年の大統領選予備選の日程はこれまでとは比較にならないほど早まり、指名争いの大勢を決める所謂「スーパー・テユーズデイ」これまでより1ヶ月以上早い2月5日になる可能性が強まった。

  1月14日にアイオワの党員集会(caucus)、1月19日にネバダの党員集会(民主党のみ)、1月22日にニューハンプシャーの予備選(primary)、1月29日と2月2日にサウスカロライナの予備選(29日が民主党、2日が共和党。共に予定)が行なわれた後、2月5日には少なくとも9州、多ければ23州が一斉に予備選をおこなう予定である。2月5日に既に予備選を決定したのは、アラバマ、アリゾナ、アーカンソー、カリフォルニア、デラウエア、ミズーリ、ネバダ(共和党のみ)、オクラホマ、ユタの9州、この日に予備選をおこなうことを検討しているのは、コロラド、フロリダ、ジョージア、イリノイ、カンザス、ミシガン、モンタナ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、ノースカロライナ、ロードアイランド、テネシー、テキサスの14州にのぼる。

  大事なのは、2月5日に予備選を実行する、あるいは実行を検討している23州の中には、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサス、イリノイ、フロリダ、ニュージャージー、ミシガン、ジョージア、テネシーなどの人口の密集する最大州の殆どを含んでいることだ。ここに含まれない大州はオハイオ、ペンシルバニア、バージニア、マサチューセッツくらいしかない。

  民主党の方を例に取ると、予備選全体で選出する代議員総数4450人前後のうちの59%に当たる2054人の代議員が2月5日の予備選で決まる。それはカリフォルニア370人、ニューヨーク232人、テキサス193人、フロリダ185人、イリノイ153人、ミシガン128人、ニュージャージー107人など多数の代議員を持つ大州がひしめくからである。特にカリフォルニアが前回の3月2日から今度は2月5日に早めるのを決定したことが大きい。

  各州が競って予備選の日程を早めたのは、指名争いの大勢が決まった後の予備選で州の果たす役割が半減するのを嫌って、各州が指名争いの行方を決める影響力を発揮することを狙っているためである。来年はその日が冬の最中の2月5日になるということである。

  2月5日に20を越える州の予備選が行なわれるとそこで代議員の約3分の2が決まる。どちらの党でももし候補の1人がこの段階で3分の2以上の圧倒的な代議員を獲得した場合には、その後他の候補が幾ら頑張っても挽回して追いつくことは不可能になる。2人ないしそれ以上の候補が拮抗状態に留まる場合に限って、その後の各州の予備選の結果が意味を持つことになる。

  2月5日以後の予備選の日程は、2月9日ルイジアナ、2月10日メイン(民主党のみ)、12日メアリランドとバージニア(共に予定)、2月19日ウィスコンシン、2月26日ハワイとアイダホ(共に党員集会。ハワイは民主党のみ)、2月中にオハイオとノースダコタ(党員集会)、3月2日ハワイ(党員集会。共和党のみ)、3月4日マサチューセッツ、ミネソタ、ペンシルバニア(予定)、バーモント、3月8日コネチカット、3月11日ミシシッピ、3月21日メイン(党員集会。共和党のみ)、5月6日インデイアナとノースカロライナ、5月10日ワイオミング(党員集会。民主党のみ)、5月13日ネブラスカ(予定)とウェストバージニア、5月20日にケンタッキーとオレゴン、5月27日にアイダホとワシントン(予定)、6月3日にサウスダコタなどとなっている。

  各候補は来年の予備選では、予備選の過程で資金集めをしたり追いつ抜かれつの競争をすることは殆ど不可能となり、最初の1ヶ月足らずで一挙に大勢を決する決戦を覚悟しなければならない。予備選が始まる段階で充分な手持ち資金を持たない候補は多くの州で一斉に選挙運動と選挙広告を展開することが難しく、そのまま脱落するということになる。予備選の途中で追いつくチャンスのあったかつての予備選とは全く異なる。(2007年3月27日)
 
 

【2006年12月】

イラク再建は如何にして困難に陥ったか

  イラクの再建は永久に不可能になった訳ではなく、例えば米国がこれからまだ10年はかけるつもりで頑張るなら容認できる安定国になる可能性はあるはずです。問題はイラク国内の自滅的混乱以上に、まず米国内の有権者が政治的にこれ以上のイラクへの投資の継続を許さなくなったことにあります。それはイラク戦略の失敗と同時に、米国民をそういう長期的なコミットメントのために準備させることを怠ったブッシュ政権の国内PR政策の失敗にもよるでしょう。

  元々イラクは第1次大戦後の中東地域の植民地化のためにイギリスが人工的に造った国でありそれを自由な民主主義国に育てようというのはあまりに非現実的な空想に過ぎないとか、イラク軍事侵攻と占領は大義名分のない全く必要のなかった軍事行動でありこれはブッシュ大統領自身の冒険的軍事行動であったとか、根本的な問題に焦点を当てた批判は多々あります。しかしながら、例えばサダム・フセイン体制を倒してイラク国民を独裁下の圧政から解放しイラク国民に自由な民主主義的な国家を造るチャンスを与えたこと自体は正しい良いことだったと想定した場合には、その再建がうまくゆかず現在のような困難に陥った原因を探ることは意味があります。それは今後のイラク政策を考えるためにも、また将来の米国の軍事外交政策を考えるためにも良い教訓となるからです。下記は筆者から見てイラク再建が困難に陥った4つの大きな原因を記したメモです。

(1)フセイン打倒後のイラク占領政策の完全な欠如

   サダム・フセイン政権を打倒した後、イラクを占領するつもりだったのか、それとも早期に米軍を引き揚げる予定だったのかのブッシュ政権の意図は未だに明らかにされていない。軍事侵攻を指揮したフランクス中央軍司令官は占領後3ヶ月の夏までには米軍の数を3万人ぐらいに減らす予定だったと語っているので、ブッシュ政権はもともとは長期占領などということは考えていなかった可能性が高い。当時のウオルフォビッツ国防副長官が公言していた如く米軍は解放軍として花束と歓呼をもってイラク人に迎えられイラク人は自ら直ちに新しい民主主義政権を樹立するだろうと本当にブッシュ政権全体が楽観していた可能性がある。そうだとすればそれは何ともナイーブな御粗末なことだったということになる。
   しかしもし侵攻前にそれなりに占領のことを考えていたならば、当時のシンセキ陸軍参謀長が議会で答えたように最初から40万人から50万人の大軍を送っていなければならないところだった。それができなかったのはウオルフォビッツやラムスフェルト長官がシンセキ参謀長の意見を「馬鹿げている」と一蹴したことにあるが、同時にイラク軍事侵攻は国際的な支援を受けた堂々たる軍事行動ではなく、国際世論の反対を迂回してこそこそと隠れてやったような軍事行動であったことがある。堂々と行動できなかった戦争であるが故にとても40万人などという大軍は送れず、また侵攻前に占領後の政策を充分に練り立案することも堂々とできなかった。
   軍事侵攻が間違いなくなった2003年初めにジェイ・ガーナー元陸軍中将が占領後の政策責任者に指名されて細々と準備を開始したが、充分なスタッフも予算もなく、ホワイトハウスと国防総省がこれをどれほど真面目に考えていたかは大きな疑問である。またガーナーの準備も、イラク人が自主的に政権を作り再建することを想定して、米国の役割はそれを側から支える顧問役程度のことしか考えていなかった節がある。

(2)非バース党化(de-baathification)とリパブリカン・ガード解散の誤り

   もたもたしているジェイ・ガーナーに代わってイラクに送られたポール・ブレマー行政長官が最初の1週間に断行したのはイラク政府や公的機関の徹底した非バース党化とサダム・フセインの軍隊であるリパブリカン・ガード全体の解散であった。サダム・フセイン色を一掃するためとは言いながら、この政策により政府・公的機関の責任ある地位にあった行政官として有能な約5万人のバース党員と兵火器の操り方や戦争のやり方を知っている30万人の陸軍将官・兵士のすべてから職を奪い彼らを路頭に迷わせることになった。これら35万人の有能なイラク人の殆どすべてはスンニー派に属する人々である。これらの人々が間もなく米駐留軍やシーア派中心のイラク暫定政権の行く手を阻むゲリラやテロリスト集団のプールとなったことは想像に難くない。米駐留軍もホワイトハウスもゲリラやテロリストの数はせいぜい数千から1万人程度に留りそれが一握りの特殊な集団に過ぎないと説明し続けていたが、それはとんでもない誤った解釈と言わざるを得ない。最初からその程度の数しかいなかったのなら現在までには彼らの掃討が終わっていなければならないはずである。毎日何百と起こる爆破テロが今日まで続いてむしろ拡大し続けてきたのは、路頭に迷わせた35万人のスンニー派の旧バース党員、旧リパブリカン・ガードの将官・兵士達が潜在的なゲリラ・テロリストとして存在するからに他ならない。
   ジェイ・ガーナーはバース党員の追放は政府公的機関のトップ1人だけに限りそれ以下の有能な役職員はそのまま残して政府機能を維持させることを考えていた。またリパブリカン・ガードもサダム・フセイン子飼いの司令官だけを解雇して陸軍そのものはそのまま温存させて新政権の下での新たな軍隊の核として機能させることを考え、そのために暫くは米軍が将官兵士に対して給与の支払いを代行して路頭に迷わさせないことまで考えた。ポール・ブレマーはそれをすべて無視して徹底した非サダム・フセイン化を断行した。その政策を決めたのがブレマー自身だったのか、ブッシュ大統領だったのか、ラムスフェルト国防長官だったのか、それともその下のファイス国防次官あたりだったのかは未だにはっきりしていない。
   非サダム・フセイン化政策は多数派のシーア派が暫定政権の主力となる機会を創り出したが、スンニー派のゲリラ行動を日常化させることにもなった最大の原因である。米軍は1ー2年前にはこの過ちに気づいて旧バース党員や旧リパブリカン・ガードの再雇用を進めるようにイラク暫定政権に進言しているが暴力ゲリラは全くおさまっていない。また今年になってからはシーア派のモクタダ・アル・サドル率いる私設軍隊の武力反撃との間での新たな宗派間の武力闘争が激化した。

(3)アメリカ一般国民に対する(長期戦争を覚悟させる)準備の欠如

 ブッシュ政権自体がイラク占領・再建が長期化することを予想できず最初から読みを誤ったが故に、アメリカ国民に対してイラク再建が何年もの長い歳月と何千億ドルもの巨額国家予算と何千もの人命の犠牲を要する大事業であるという教育を早い段階からおこない長期化の覚悟の準備をさせることもできなかった。あるいはそういう努力を完全に怠った。むしろ国民に対しては節目ごとにイラク再建の完了は間近いという印象を与えようとし続けた。その結果、長期化の覚悟をしていなかった米国民はイラク再建が長引けば長引くほど忍耐を切らし、ブッシュ政権には裏切られたとの気持ちを抱くに至った。
   最初から長期にわたる大事業であることを知らせておけば米国民は未だついて来たかも知れないが、ブッシュ政権自体がかくの如き長期化を予想していなかったのでは米国民にその準備をさせることができるはずもなかった。だからこそ、これからも更に米国が長期のコミットメントをするのであるなら、今度こそは米国民に対してその覚悟をすべきことをはっきりと訴える必要がある。

(4)イラク政府とイラク国民の予想を越えた驚くべき無能さ・無力さ

   これもまたブッシュ政権も米国一般国民も予想していなかったことであった。米国が如何に多くの犠牲を払い如何なる努力をしようとも、イラク政府もイラクという国も存在しないに等しいような状態では再建も何もあったものではない。イラクを自立させるために米国が作り上げた政治日程のすべては予定通り遂行させることに成功した。立派な憲法ができ国民議会選挙が成功し新政府も誕生した。そのできあがった新政府がかくも無能でイラク自立再建のために全く役立たないとはブッシュ政権もとても予想できなかった感がある。イラク政府は安全なグリーンゾーンの中に名目上存在するだけでイラクは実際には無政府状態にある。しかしそれでも国がつぶれていないのは15万の米駐留軍が頑張っているからである。
   しかしもともと存在しないに等しいものを幾ら支えようとしてもその努力は空しく終わる。それがこの半年以上の状況と考えてよい。そういうイラクの政府は米国がこれ以上の犠牲を払うには全く値しない。
   今後米国はマーリキ政権にこれまでとは違うレベルの政治的圧力をかける可能性が高いが、これとてどれほどの意味があるかが疑わしい。最終的には、マーリキ政権とイラクを見限って結局イラクから手を引くか、あるいはこれまで以上に米軍が中心になって長期に亘ってイラクの安定化を図るかのいずれかの選択肢しかないようにも思われる。マーリキ首相を見限って他の指導者のてこ入れをするという策もあるが、これはマーリキ首相が国民議会選挙の産物として出てきた人物であるために難しい。(12/15/06)

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【今月のキー・ワーズ (Key Words)】

【2007年1月】

Bipartisanship & Civility: Democratic slogan aired by House Speaker Nancy Pelosi.  Every congressman was encouraged to be courtious and civil in the House chamber so that congress could work for American people, not for parties, with bipartisan manner.  The slogan has been successfully adopted by most House members regardless of party affiliation, for now.

【2006年12月】

ISG: Bipartisan Iraq Study Group co-chaired by former Congressman Lee Hamilton and former Secretary of State James Baker Jr.  Created by U.S. Congress in March, 2006, in order to have them review U.S. policy toward Iraq.  Published a final report (ISGR) on December 6 which proposed 79 policy recommendations on Iraq.  Strongly advocated (1) diplomatic offensive toward Arab neighboring countries to stabilize Iraq, (2) withdrawal of 75,000 U.S. combat troops by the first quarter of 2008, and (3) additional political pressure toward the al-Maliki government for restoring social order and national reconciliation.  President Bush may not adopt many of their recomendations such as early withdrawal of combat troops or diplomatic negotiations with Iran and Syria.  Its members include former Supreme Justice Sandra Day O'Conner, former Attorney General Edwin Meese, former Senator Alan Simpson (R-Wyoming), former Senator Charles Robb (D-Virginia) and former House Representative Leon Panetta (D-California).
 

【2004年7月】

9/11 Commission:2001年9月11日テロを未然に防げなかった理由を調査するために1年前に設置された超党派の国家調査委員会。トーマス・キーン委員長、リー・ハミルトン副委員長。7月22日に570頁の最終報告書を発表。

Value:民主党大統領候補のケリーが、今度の大統領選の焦点は "value"にあると演説し始めたことから、この言葉が急に大きな話題に取り上げられた。しかし、ケリーが「自分は保守的な価値観を持った大統領候補だ」という非現実的な発言をしたことを境に、ブッシュ大統領が「ケリーはどうかしているのではないか。保守的価値観を持っているのは自分であって、ケリーの価値観はアメリカ本来の価値観から完全に外れたマサチューセッツ・リベラルだけを代表する価値観だ」と反論、両候補がこの言葉をめぐって大論争を展開する。

Running Mate:大統領選の副大統領候補のこと。一緒に選挙選を走るでのランニング・メイトと言う。日本のように堅苦しい大げさな言葉は使わない。
 

【2004年6月】

F***:チェイニー副大統領が民主党のリーヒー上院議員(バーモント選出)に思わず吐いた言葉。エネルギー政策立案のための審議会名簿の公表を執拗に要求するリーヒー議員の党派的は個人攻撃に業を煮やしたチェイニーが議会内でリーヒーに反撃した際にこの F-word が出たと話題になった。チェイニーはしつこいリーヒーに "Fuck you."と言ったらしい。
 

【2004年5月】

Abu Ghraib:イラクのバグダッドにある悪名高い刑務所。サダム・フセイン政権下では多数の政治犯の隔離、拷問、殺害に使われた。米軍占領後は、サダム・フセインの残党やゲリラ、テロリストの収容所として使用されてきた。5月の初めになって、イラク人捕虜を裸にしてポルノまがいの行為を強要したり、拷問に近い虐待をおこなってきた実態が写真も含めて明らかになり、大きな政治問題となる。ブッシュ大統領、ラムスフェルト国防長官が国際的に陳謝。米国議会は虐待の実態を明らかにするための調査、公聴会を開始。
 

【2004年4月】

Operation Vigilant Resolve:イラクのファルージャの反米テロ分子を徹底的に逮捕するための米軍海兵隊の特殊作戦の名。民間アメリカ人4人を惨殺したことに対する報復の軍事作戦。サダム・フセイン残党と周辺国からのイスラム教過激派テロリストの抵抗は激しく。米軍の死傷者も増えている。

PDB:President's Daily Brief.大統領が毎朝CIA長官から受ける最新の諜報活動レポート。2001年9月11日テロを阻止できなかった原因を調べる「9月11日テロ調査委員会」の調査の過程で、テロより5週間前の8月6日のブッシュ大統領へのPDBがオサマ・ビン・ラーデインの米国内でのテロ計画に関するものであることが判明したことから、そのPDBを公開するかどうかが議論の焦点となった。圧力に負けてブッシュ・ホワイトハウスは4月10日(土)午後遅く8月6日PDBを公開。しかしその内容はライス国家安全保障補佐官が証言した通り、ビン・ラーデインの米国内でのテロのたくらみを歴史的に纏めたもので、9月11日テロの警告に当たるようなものではなかった。

Insurgency:暴動、反乱。4月初めからのイラクのイスラム過激派の武力反抗は全国的なものではなく、地域的暴動に過ぎないということで "insurgency"という言葉を使う。米国メデイアは、全国的な武力蜂起を表わす"uprising" に対比させて使っている。

quagmire:クアッグマイア。沼地の意から「苦境」「泥沼」の意に派生。イラクの現在の苦境をクアッグマイアと呼ぶ関係者が多い。米軍主導の再建が難しい状況に陥り、あがきがとれないばかりでなく、当面そこから這い出す目処も立っていない。

Sunni Triangle:イラク中央部のバグダッドと西のファルージャ、ラマデイ、北のテイクリットとを結ぶ三角地帯で、サダム・フセイン体制を支えたスンニー派イスラム教徒の居住区。サダム・フセイン政権崩壊後、米駐留軍に武力反抗を続ける危険な地域となった。サダム・フセインは昨年12月9日、テイクリット南部30マイルの農家で逮捕された。ファルージャの武力反抗には米海兵隊もてこずっている。
 
 

【2004年3月】

Super Tuesday:スーパー・テユーデイ。大統領選予備選の過程で党の大統領候補を決めるのに決定的に大きな役割を果たす選挙日(通常火曜日)の通称。今年は3月2日(火)がそれに当たったが2月3日をスーパー・テユーズデイと呼んだ人もいる。3月2日に行なわれたのは、カリフォルニア(選出代議員数370人)、ニューヨーク(236人)、オハイオ(140人)、マサチューセッツ(93人)、ジョージア(86人)、メアリランド(69人)、コネテイカット(49人)、ロードアイランド(21人)、ヴァーモント(15人)の9州の民主党大統領予備選とミネソタ(72人)の党員集会。来る7月26日から29日にボストンで開催される民主党全国大会に集まる計4322人の代議員(党有力者代議員も含めた数)の約3分の1がこの日に決まる。ヴァーモントを除く9州で1位になったジョン・ケリー候補が指名を確実にした。

Outsourcing:アウトソーシング。企業がコスト削減のため生産施設を海外に移し安価な製品を逆輸入する。大企業、多国籍企業ならどこでもやっていることだが、大統領選を控えたアメリカでは雇用喪失の根源という汚名を着せられた。ブッシュ政権のグレゴリー・マンキュウ経済諮問評議会長が議会証言でうっかり「アウトソーシングは良いこと」と口を滑らせたのをきっかけに、民主党のケリー大統領候補などが「ブッシュ政権はアウトソーシングを奨励して失業を増やしている」と非難しだした。最近では製造業に限らず、コンピューターのソフトのサービスなどがごっそりとインドに移されてアウトソーシングされていることもあって、問題は広がった。議会は企業のアイトソーシングを規制する動きさえ見せている。

Negative Ads:大統領選挙などで一方の候補が対立候補の私生活のスキャンダルや過去の政策の失策などに焦点を当てて選挙用に作製・放映する攻撃的な(テレビ)選挙広告。有権者の間で対立候補のイメージを悪くし、対立候補の自滅を目指す。ネガテイブ・キャンペーンとも言う。アメリカの選挙では常道の選挙戦略。ブッシュとケリーのネガテイブ・キャンペーンは既に始まっている。
 
 

【2004年2月】

Gay Marriage 同性愛結婚。マサチューセッツ最高裁は2月初め、全米で初めて同性愛者間の「結婚」を認めた。続いて、サンフランシスコ市市長が今月中頃から同性愛者のカップルに結婚の証明書を発行し始めた。サンフランシスコ市長の行動は同性愛者間の「結婚」を禁じたカリフォルニア州法に違反。same-sex marriageとも言う。米国全体で賛否の議論沸騰。憲法修正案で「結婚」とは異性間の結合であると再定義しろという憲法修正論が頭をもたげている。

WMD: 大量破壊兵器 weapons of mass destruction の略。イラクの大量破壊兵器捜索にあたっていたデイヴィッド・ケイが WMD は結局発見されないだろうと発言してワシントンは大騒ぎ。ブッシュ大統領は何のためにイラク侵攻にふみきったのかと追求される。WMDに含まれるのは、核兵器、生物兵器、化学兵器などだが、広義では長距離大型ミサイルなども含まれる。今までのところイラクでは核兵器、生物兵器、化学兵器の大量在庫は見つかっていないが、国連が決めた150マイルの飛距離を上回る600マイルの飛距離の大型ミサイルは数十本見つかった。

Caucus:党員集会と訳されるが、党員というよりは党を支持する有権者の代表者の集会。大統領予備選に代わって、同じ党の有権者代表が集まって話し合いと議論で支持者を決める。アイオワ州のコーカスが有名。

State of the Union Address:日本語の「一般教書演説」は誤訳。State of the Union とは国(the Union)の現状(State)という意味で、国の現状を議会に報告する憲法上の義務を持つ大統領の年頭議会演説の意。年頭議会演説と訳しておけばよい。昔の日本人にはアメリカの大統領が偉く見えたのか、大統領が議会と国民に「教える」という誤解をしたらしい。民主主義国アメリカでは大統領も国民も平等なので、国民は大統領を特別に偉いなどとは思わないし、教えてもらうという感覚も全くない。

Cialis:シアーリスと発音。Viagra, Levitraに次ぐ3番目の男根勃起薬。FDAが最近市販を認可。医師の処方箋を要す。血液の流れをコントロールする化学物質の機能を一時的に麻痺させて男根勃起を化学的に引き起こす。Cialisは36時間有効な「週末の勃起薬」というのが売り文句。今年のスーパー・ボウル中継中のテレビコマーシャルで有名になった。最近は全米のテレビのあらゆるチャネルが朝からViagra, Levitra, Cialisのコマーシャルを繰り返し流すので、セックスのことをよく知らない10歳の女の子でもこれらの薬の名前だけはよく知っている。

Spin:言葉の言い回し、言葉のカラクリ、言い逃れのこと。政治的な追及を逃れ、すべての出来事を自分の都合の良いように解釈し、また大衆をそのように誘導する話術を指す。アメリカの政界ではスピンのうまい政治家ほど高い評価を受ける傾向がある。特に民主党政治家にスピンに長けた人物が多く、クリントン前大統領とその側近の補佐官達のスピンの巧妙さは図抜けていた。今度民主党の大統領候補になるケリーもクリントン顔負けの巧妙なスピンを使う。他方、ブッシュ大統領を初め同政権の高官は概してスピンが下手。なおケーブルテレビ、フォックス・ニュース・チャネルが毎晩8時から1時間流すニュース評論番組、ビル・オライリーの "No Spin Zone"の spin も同じ意味。

Spoiler:選挙で最有力候補の票の一部を奪って選挙の結果を逆転させる候補のこと。1992年大統領選のロス・ペロー候補、2000年大統領選のラルフ・ネイダー候補などがこれに当たる。ペロー、ネイダーがいなかったなら1992年はクリントンではなくブッシュ、2000年はブッシュではなくゴアが勝っていた可能性が高い。ラルフ・ネイダーは今年も無所属で大統領選立候補を表明、民主党候補から票を奪うスポイラーとなる可能性がある。

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【今月のキー・プレイヤーズ (Key Players)】

【2007年1月】

George W. Bush: Lame duck President of the United States of America.  Trapped by Iraq debacle, he decided to send more U.S. troops to Iraq in order to secure Baghdad, instead of withdrawing troops.  Increasingly isolated from American public.

【2006年12月】

late Gerald Ford: 38th U.S. President.  Died December 27, 2006, at age 93.  Succeeded President Nixon in 1974 after his resignation on Watergate scandal.  Was defeated by Democratic neophyte, Jimmy Carter, in the 1976 Presidential election.  Current Vice President Dick Cheney was Chief of Staff to President Ford and recently resigned Defense Secretary Donald Rumsfeld was Defense Secretary also in the Ford administration.

Barak Obama: U.S. Senator from Illinois.  A 2008 Democratic Presidential hopeful whose profile has been dramatically enhanced in recent months.  Grew up with his caucasian mother though his father is a Kenyan.  The keynote speaker at the 2004 Democratic Convention.  Graduated from Columbia University and Harvard Law School.

Nancy Pelosi: Incoming House Speaker.  Made a history by becoming the first female House Speaker in U.S. history.  The tenth-term Congresswoman from the 8th district of California (San Francisco Bay area)  has long been considered as ultra-liberal, but in reality appears to be pragmatic.  Expected to become a major political figure in the 110th Congress.
 

【2004年8月】

Swift Boat Veterans:民主党のケリー大統領候補のベトナム従軍当時(1968年11月ー69年3月)の仲間。swift boat はベトナム沿岸に多数配備された海軍の高速パトロール船で、ケリーもその一隻の司令官を務めた。ケリーがかすり傷だけで3つのパープル・ハート勲章をもらい4ヶ月半の従軍で米国に帰国したこと、帰国後は従軍兵士反戦グループの指導者としてベトナムにおける米軍兵士の暴虐を著しく誇張して喧伝したことなどに64人の戦争仲間が反感を持ち、ケリー候補非難の大キャンペーンを展開。ケリー候補の信用度を台無しにし、ケリーの支持率を落とすことに成功。

Porter Goss:フロリダ選出8期目の共和党下院議員。下院諜報活動委員会委員長。10日(火)次期CIA長官候補に指名される。60年代から70年代にかけてCIAに勤務して内情に詳しいと同時に、下院諜報活動委員長としてCIAの活動を監視する立場にもあった。理想的指名で上院の承認を受けることは間違いない。
 

【2004年7月】

John Forbes Kerry:民主党全国大会で大統領候補指名を受諾。指名受諾演説で、これまでの優柔不断な政治家との印象を振り払って、「大統領的な」演説をおこなうことに成功。民主党関係者・有権者を喜ばせる。

Barack Obamaイリノイ州民主党上院議員候補。ケニヤ人を父親、カンザスの白人女性を母親とし、母親側の家族に育てられた42歳の黒人政治家。コロンビア大学、ハーバード大学ロースクールを卒業し現在イリノイ州議会上院議員。ボストンの民主党全国大会の27日(火)夜、見事な基調演説をおこなって一躍民主党若手政治家のホープとなる。

Thomas Kean/Lee Hamilton:「9・11テロ国家調査委員会」の委員長、副委員長。22日、同委員会の調査報告書を発表。クリントン前政権、ブッシュ政権両方の諜報スパイ活動の怠慢とテロ政策の失敗が9月11日テロを招いたと断定、今後の抜本的な改革案を提案。

Pat Roberts/John "Jay" Rockefeller:上院諜報活動特別委員会の委員長と副委員長。CIAのイラク大量破壊兵器スパイ活動の失敗を厳しく批判する委員会調査報告を発表。CIAのテネット前長官を厳しく叱責し、CIAの諜報活動の抜本的見直しを求める。

John Edwards:民主党大統領候補ジョン・ケリーのランニング・メイト(副大統領候補)に指名されたノースカロライナ州選出上院議員。51歳。訴追弁護士として大企業を相手どって巨万の富を築いた典型的弁護士。政治家に転身したのは1996年で経験は浅い。ケリー大統領候補とは親密ではなかったが、民主党予備選での活躍が評価された。
 

【2004年6月】

Abu Musab Zarqawi:ザーカウィ。ヨルダン人テロリストでアルカイダのイラクでの活動の指導者。サダム・フセイン崩壊以来、イラクの反米軍テロを首謀。爆弾テロ、組織的な武力抵抗、捕虜・人質の首切りで活躍。米軍は彼の首に100万ドルの賞金をつけているが、容易に捕まらず。イラク暫定政権の最大の敵。

Michael Moore:ブッシュ大統領のイラク軍事攻撃を厳しく批判したドキュメンタリー映画、"Fahrenheit 9/11"を発表。ブッシュ大統領の再選を阻止しようとする政治的意図から作製された極めて党派的な映画だが、民主党有権者は熱狂的に歓迎。限られた興行であったにも拘らず、上映開始の最初の週末には一位の2300万ドルの売上げを記録。

Iyad Allawi:イラク暫定政権の首相に選ばれる。シーア派だが宗教色は薄く、民主主義国家再建を目指して強力な指導力を発揮。6月28日、暫定統治機構のブレマー長官からイラク主権を委譲される。1971年から昨年までロンドンに亡命してサダム・フセイン打倒のための運動をCIAと共に展開してきた。
 
 

【2004年5月】

Donald Rumsfeld:ブッシュ政権発足以来の国防長官で、9月11日テロ以後は、ブッシュ政権のテロリズム戦争、アフガニスタン軍事攻略、イラク軍事侵攻・占領の戦略的立役者。30年前フォード政権下でも史上最年少の31歳で国防長官に就任、今回は2回目。米軍の増強とハイテック化にも大きく貢献。しかしイラクのアブ・グレイブ刑務所でのイラク人捕虜虐待の責任を追及されて、陳謝。しかし民主党からの辞任要求は拒否。
 
 

【2004年4月】

Moqtada Al-Sadr:イラクのシーア派過激派の若手指導者。4月5日(月)の週からイラク全土のシーア派住民に、アメリカ・同盟軍に対する武力蜂起を呼びかけ。イラク各地での過激派武力反乱を引き起こす。より年長のシーア派指導者、グランド・アヤトラ・アル・シスタニから主導権を奪う狙いもある。イラクの判事がサドル逮捕状を発行し米軍が捕縛を狙っているが、10000万人を越える武装信者が守っており捕縛は容易ではなさそう。

George W. Bush:ブッシュ大統領。イラクのスンイー、シーア両派過激集団の武力反抗の激化と9月11日テロの責任問題を問われて、支持率が急降下。それを止めるために急遽公式記者会見に打って出る。応答は冴えず、共和党有権者をがっかりさせる。当分は苦境が続きそう。

Jamie Gorelick:「9月11日テロ調査委員会」の民主党系女性議員。ハーバード大、ハーバード・ロースクール出身の優秀なユダヤ系弁護士。1993年国防総省主任弁護士としてクリントン政権入り、1994年司法副長官に抜擢されて活躍。「9月11日テロ調査委員会」では民主党系委員としてブッシュ政権高官の9月11日テロへの責任を追及。しかしFBIの犯罪捜査当局とスパイ捜査当局の壁を作る1995年の行政命令を書いたのは彼女であることが判明、テロを防止できなかった原因のひとつを作った責任があるとして、厳しい批判を受ける。

John Ashcroft:現司法長官。ミズーリ州知事を2期、上院議員を1期務めた政治家でブッシュ政権発足と同時に司法長官に就任。「9月11日テロ調査委員会」の証人に呼ばれたが、1995年にFBIのスパイ摘発能力弱めた行政命令を書いたのは同委員会委員の一人だったと爆弾発言。当該委員であるジェイミー・ゴレリック元司法副長官の辞任要求問題を引き起こす。アッシュクロフトは2000年大統領選の共和党候補に立候補することも一時考えたことのある実力者。

Bob Woodward:ワシンポスト紙の年長記者でニクソン大統領のウオーターゲート事件のスキャンダルを暴いた記者の1人。今週、新刊本"Plan of Attack"を出版、ブッシュ大統領がイラク攻撃決断に至った過程を再現する。イラク攻撃の準備は2001年9月11日テロの3ヶ月後の12月には始めた、パウエル国務長官はイラク攻撃に反対しチェイニー副大統領と厳しく対立した、ブッシュ大統領のイラク攻撃決断は神懸りだった、など色々な議論を巻き起こす。パウエル国務長官、ラムスフェルト国防長官などはウッドワードのこうした記述は事実を歪曲したものと反論。

Kakhdar Brahimi:国連イラク特使。6月30日のイラクの政権委譲の手順を作ることを期待されている。米国が事実上ギブアップした仕事を引き受けることになった。27日の国連安保理事会で大統領、2副大統領、首相、26閣僚から成る暫定政権の構成を提案。イラクの治安は悪化する一方だが、主権委譲の成否はこの外交官の肩にかかっている。アスジェリアの元外交官でスンニー派の回教徒。親米派ではない。
 
 

【2004年3月】

Grand Ayatollah Ali Sistani:イラクの人口の60%を占めるイスラム教シーア派の総師。民主国家新イラクの建国の鍵を握る宗教指導者。彼が賛成しない限り、イラクの如何なる政策も決まらない。今年初めまでは米国に着かず離れずで、米国の提案に「イエス」か「ノー」かの回答だけをしてい。しかし最近は、暫定政権を擁立する国民会議のメンバーを談合ではなく選挙によって選べと主張したり、3月8日に統治評議会が署名した暫定憲法の内容に反対して署名を引き延ばすなど、影響力を増している。暫定政権に統治権が移ってからは更に発言権を増すのではないか。顔つきも激しい。

Martha Stewart:家庭の主婦向けの各種商品、ホーム・メイキングのテレビ教養番組、雑誌出版などで独創的なビジネスを創り出した米国を代表する女性企業家・経営者。親友の経営するバイオテック新興企業 InClone Systems,Inc.の株をインサイダー取引で売却したことに絡んだ偽証、裁判妨害などで告発を受け、3月4日有罪の判決を受ける。エンロンやワールドコムなどの大企業経営者の大掛かりで組織的な犯罪に比べると極めて限られた社会的影響も殆ど無い犯罪だったが、マーサ・スチュアートが全米に知られ愛された有名タレントであったために、他の潜在的犯罪者への「見せしめ」として利用された感じがある。彼女の弁護団の作戦の誤りという見方もある。いずれにしても彼女は気の毒な不運に見舞われた。62歳だが美容整形手術などによってか遥かに若く見える。

Bob Shrum:民主党大統領候補ジョン・ケリーのメデイア・コンサルタント。ブッシュ攻撃の仕掛け人で "attack dog"と通称される。大統領選、議会選で民主党有力候補の選挙参謀として長年仕事をしてきた典型的な政治コンサルタントで、ケリー候補とは30年近くの付き合い。ケリー候補がブッシュ攻撃で既に大きな得点を上げている背景にはシュラムの助言がある。

Al Qaeda:3月11日スペインのマドリッドで満員の通勤電車3両の同時爆破テロを敢行。死者200人、負傷者1500人の大惨事となる。2001年9月11日から丁度2年半後の欧州を舞台にしたカムバック。14日に行なわれた議会総選挙に大きなインパクトを与え、親米政策に反対する野党社会労働者党を勝利に導いた。

The Media Fund2002年の選挙法改正により共和・民主両党全国委員会などが規制のない献金「ソフト・マネー」を集めて連邦選挙に使うことが全面的に禁止されたため、その抜け穴として、国際為替取引で巨万の富を築いたジョージ・ソロスが9500万ドルの私財を投じて民主党大統領候補支援のために設立した政治支援団体。クリントン大統領の副首席補佐官だったハロルド・イッキーズ(Harold Ickes)が専務理事を務める。ケリー候補はブッシュ大統領の選挙資金に太刀打ちできないため、ケリー選挙委員会に代わってケリー支援のためのテレビ・コマーシャルを流している。明らかな選挙法の違反のため、連邦選挙委員会が近く活動を禁止する可能性が高い。

Richard Clark:クリントン前政権ホワイトハウス国家安全保障協議会のテロリズム対策担当補佐官。ブッシュ政権発足後も引き継ぎで8ヶ月同職にとどまる。新刊書"Against All Enemies"で9月11日テロを招いたのはブッシュ政権の責任と非難してワシントンで大論争を引き起こす。クラークはケリー候補を正式に応援している訳ではないが、選挙にインパクトを与えかねないブッシュ大統領批判である。実際には、90年代にオサマ・ビン・ラーデインを捕縛できなかった責任や2001年9月11日テロを未然に防げなかった責任の一端はクラーク自身にある。

Condoleezza Rice:ホワイトハウスハウスの国家安全保障補佐官。ブッシュ大統領の外交補佐官として重要な役割を果たしてきたが、2001年9月11日テロを阻止するための施策を充分に取らなかったとして、元部下のリチャード・クラーク(上記参照)から批判を受ける。議会超党派の「9月11日テロ調査委員会」での証言を行政権の司法権からの独立権限を理由に拒否してきたが、最後には折れて、証言に同意。ブッシュ再選に係わる重大事をうまく乗り切れるかどうか注目されている。
 
 

【2004年2月】

John Kerry:民主党大統領選予備選のフロントランナー。マサチューセッツ州選出の4期目の上院議員で60歳。民主党リベラル派のスタンダード・ベアラーで、弁舌に長けている。6フィート4インチ(192センチ)の長身で、討論会の握手で5フィート11インチ(179センチ)のブッシュ大統領を見下ろすことができる。ハインツ上院議員が飛行機事故で死んだ2年後に、ハインツ・ケチャップの資産5億ドルを持ったテレーズ夫人と結婚したしたたかさを持つ。血筋としては父親がユダヤ系だが祖父の段階で(1900年頃)キリスト教のカトリックに改宗してしまったのでユダヤ系とはみなされない。

David Kay:イランの大量破壊兵器捜索のためにCIAが指名した捜索団長。1200人いた捜索軍隊の一部をイラク治安維持強化のために駐留米軍に取られたことに反発して、最終報告作成を待たずに1月末辞任。その直後、イランの大量破壊兵器の発見の可能性はないと公言して、ワシントンで大騒ぎとなる。共和党の信用が厚かった専門家の発言のため共和党も彼の発言を信じざるを得ず、イラク戦争の大義名分が空中分解した。結果的には、大量破壊兵器の保有を国際的な理由にイラク攻撃を決断したブッシュ大統領に恥をかかせ、ブッシュ大統領の支持率を急落させる張本人となった。彼は優秀だが彼の発言を100%そのまま鵜のみにすることには問題があり、ラムスフェルト国防長官などは彼をまともには信じていない。

Ralph Nader:今年の大統領選にも無所属で出馬することを22日に発表。前回2000年の大統領選ではグリーン党から出馬して全米で288万票(2.7%)を得票、民主党のゴア候補を敗北に追いやった張本人。2000年選挙では接戦州のフロリダとニューハンプシャーでゴアの票を食ってゴアを敗北させた。ネーダーがいなければゴアは291人の選挙人を獲得して大統領になっていたところ。今回も民主党大統領候補の票を食うことになろう。ブッシュにとっての朗報。

Mel Gibson:ハリウッドの映画俳優、デイレクター。自分の資産2500万ドルを使って「キリストの受難(The Passion of the Christ)」という映画を作成。2月25日に全米公開された。この映画は、イエス・キリストの死刑に至るまでの10数時間の肉体的受難と苦痛を聖書の描写に忠実に再現したもので、人類の罪を背負って十字架についたイエス・キリストの受難と復活と人々の罪からの解放の意味を正面から問うもの。キリスト教徒にとっては最良の教育映画であるが、ユダヤ系が絶大な社会的発言力を持つアメリカではユダヤ系活動家や市民が一斉にこれを「反ユダヤ主義的映画(anti-semitic movie)」と非難しだした。イエス・キリストをローマ行政官のピラトに訴えて死に追いやったのはイエスを憎む伝統的なユダヤ司祭やユダヤ民衆であったことはルカ書などに明快に描かれているが、ユダヤ系アメリカ人はこの映画を見た一般のアメリカ人がユダヤ系アメリカ人に反感を持つことを警戒する。映画の是非は全米を巻き込む大論争に発展している。

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