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Yesとハイの話



    「はい」は"Yes"、「いいえ」は"No"。今時、小学生でも知っています。
    ところが、この常識には落とし穴があります。否定疑問文"(Don`t you 〜?)や、 付加疑問文(〜,isn`t it?)です。日本語で「はい」が"No"になり、「いいえ」が "Yes"になってしまうのです。頭では分かっていますし、文章で読んでいる分には たいした問題もありませんが、会話になってくると厄介なものです。ある程度の スピードが必要なのと動作が伴うからです。
    恋人と口論して、"You don`t love me anymore, do you?"と言われたとします。 「あなたは、もう私の事なんか愛してないんでしょ?」と言われた訳ですが、 もちろんそんなことはありません。「ううん。そんなことないさ。」と言うつもりで、 あわてて、思わず首を横に振って "No. No."と言ってしまうと、大変なことになってしまいます。 ここは、横に振りたい首を無理矢理縦に振って、"Yes. I do love you."と言わなければ なりません。
    詳しくは覚えていませんが、私が電話で何かの有料サービスをキャンセルしようとした時に、 相手に、"You don`t want it?" と言われて、「そうだ。」のつもりで、"Yes."と言って しまい、話がこんがらがってしまったことがあります。ここは、"No. I don`t want it." と言うべき所でした。

    私はアメリカにくる前に香港で2年間生活していて、それなりに英会話をしていたのですが、 興味深いのは、この問題を痛感したのはアメリカに来てからで、香港で暮らしていた時は 気にならなかったということです。こちらに来てからもアジア系の人と話す時には、 yesとnoが私の発想と同じになっていることに気が付き、「あれ? この人の母国語では 日本語と同じなのかな?」と思うことがあるのです。

    法律関係の雑誌に、アメリカで通訳をされている方の体験談が載っていました。
    アメリカの法廷で通訳をしていたところ、休憩中にアメリカ人の書記官が、判事に、 「自分は日本語を習っている。さっき証人が "ハイ"と言ったのに、あの通訳は  "No"と英語に訳した。あの通訳は、うその通訳をしている。」と告げ口をしているの 目撃したとか。その通訳の方は「中途半端な知識を持っている人が一番厄介だ。」と おっしゃっていました。 私たちの問題は、そっくりそのまま日本語を習う外国人の方にも当てはまると言うことですが、 ことが裁判となると、笑うに笑えないですよね。

    こっちでアメリカ人と結婚しているS子さんとE子さんが、この話題で、 「"Yeah!... I mean `No!`"って言う時がよくあるんだよね。」「うん、あるある。 正反対なのにね。やんなっちゃう。」と話していました。私は、"I mean `No`"と、 ぱっと続けられるところがさすがだ、と内心感心して聞いていたのですが、 こちらの生活が長い方ですらそうなのですから、私が苦労するのは当たり前です。
    このことに関して、私は次の2つのことに気を付けるようにしています。一つは、"Yes"、 "No"だけで文章を終わらせず、"I don`t want it."等のように、文章を続けることです。 これでかなりの誤解は防げます。"Yes. I don`t want it."と言ったのでは、意味が分からなく なりますが、少なくとも全面的に誤解されることにはなりません。二つ目は、なるべく "Yeah" を使わないことです。"Yeah"は「うん」という感じなので、慣れてくるとよく使うようになります。 でも「慣れてくる」と言うのが怖いのです。油断は禁物です。

    私は6年もアメリカにいたせいで、それなりに英会話は上達したのですが(?)、最近困ったことに 気がつきました。それは、日本語で話していて否定疑問文になってしまった時に、何か言いようのない 不安にかられることがあるのです。別にそれで不自由している訳でもなんでもないのですが、 帰国子女などのバイリンガルの人の頭の中は、どうなっているんだろうと、ふと思ってしまいます。


    Sugimoto

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