おいで、おいで、の話し
日本に帰ってきて半年ですが、海外で数年暮らしていて身に付いてしまったことが、いまだに出てきてます。びっくりした時に“オー マイ ガーッド”と思わず言ってしまうのもその一つです。誰に迷惑をかけるわけでもないし、別にいいかと思っていますが、たまたま隣にいた人には、「何や、あのオッサン? いい年してアメリカかぶれか?」と思われているかも知れません。 道を渡る時に、赤信号でも渡ってしまうことは、アメリカで暮らす前にはめったに無かったのですが、帰ってきてからは、無性に渡りたくなります。香港でも、アメリカでも、車が来ていなければ、赤信号でも渡る人が多いので、それに慣れてしまったのです。でも、あくまで法律違反ですから、こっちの方は、早く直した方が良いかも知れません。アメリカでもやはり法律違反であることに違いはありません。ニューヨークなどでは、最近は見つかると罰金を取られると聞きました。(L.A.でも割と厳しいとか。)
私自身が割と困っているのは、アメリカに居る時に身に付いた仕草についてです。 例えば、人を呼ぶときに、日本人は手を下に向けて、おいでおいでをします。ところがアメリカでは手を上に向けて、おいでおいでをします。人差し指を曲げることもありますが、その時も指は上に向けて曲げます。
黒柳徹子さんの本に、初めて飛行機に載った時に、スチュワーデスに用事があって、おいでをおいでしたけれども、ニコニコと手を振ってくれるだけで、ちっとも来てくれなかったという話しが載っていました。また、ある日本人の家庭がアメリカに引っ越して来てすぐの頃に、その家の子供が庭で遊んでいたところ、近所の子供が来て一緒に遊びたそうにしていたので、おいでおいでをしたら、その子は何故か泣いて帰ってしまったという話も何かで読んだことがあります。おいでおいでが、あっちへ行けというサインになってしまったのです。 他にも、日本で、外人向けみやげ物用の招き猫は、手の向きが逆になっていると言う話も聞いた事があります。
「ヘイ、カモン」と人差し指を曲げる仕草などは、映画を通じて日本でも大抵の人は知っていますが、この仕草は日本人の間では失礼または横柄なものと感じる人が多いと思います。手の向きが上か下かに加えて、この違いはとても不便です。 自分が人に呼ばれる方はまだましです。どう感じるかは別として、相手が何を望んでいるか分りますし、割と自然に反応できます。 でも、自分が他人にこっちに来て欲しい場合は、日本流では通じないので、意識して手を上に向けないといけません。自分が横柄だと感じる事を、あえてする訳ですから、この仕草をするのには勇気が要りますし、慣れるまではなかなか大変です。 ところが今度は、日本に帰って来て困ってしまいました。数年間、手のひらを上に向ける努力をしたものですから、日本に帰ってからも人を呼ぶ時に自然に手が上を向いてしまうのです。若い人の間ではそうでもないかもしれませんが、会社で上司に向かってこれをやろうものなら、出世はあきらめないといけなくなるでしょう。自然に手が下に向くのに時間は掛からないと思いますが、これまでの努力が裏目に出てしまったかたちです。
もう一つ、先日思わずやってしまって、ぞっとした仕草があります。 それは、自分が何も知らないという事を示す、両方の手のひらを外側に向けて肩をすくめる仕草です。これはものすごく欧米的で、日本人はこの仕草をされると、馬鹿にされたとすら感じます。実際私も、アメリカで仕事をしていた時に、自分の部下に初めてこの仕草をされた時には、思わずかっとしました。仕事上のミスについて誰に責任があるかというような話の時には、かなりの確率でこの仕草に出会います。決して悪気は無いのですが、こっちにしてみると、無責任さの象徴のようにすら見えてしまいます。 先日会社で年上の人と話している時に、この仕草が出てしまったのです。私の動揺は想像してもらえると思います。
P.S. 他にも、仕草の違いは意外とあります。 日本では、自分を指す時に自分の鼻を指しますが、アメリカでは自分の胸を指します。日本人に慣れた人ならそうでもありませんが、大抵の場合は「鼻でもかゆいのかな?」とキョトンとされます。
Sugimoto
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